好まれざる快楽
今朝起きてシャワーを浴びようと思い服を脱ぎ風呂場へ行った。
いつもの様にお湯と水の蛇口を操作し、
水温を調整して浴び始めると間もなく水流が弱くなってきた。
ん?と思い未体験ゾーンまで蛇口をひねるも勢いは弱まるばかり。
ついには全開にしたところでぴたりと止まってしまった。
この時、ある事を思い出した。
だいぶ前から自宅マンションの掲示板に断水の告知が貼り出されており、
昨夜帰ってきた時にその日付を確認した事を、である。
確かその日付は1週間後の今日であったはずだった。
まさか業者が1週間間違えたのか?と思い、
中途半端にぬれた身体を拭き、服を着て階下に向った。
するとなんと今日も来週も2週続けて断水との事。
僕の見落としだったのだ。
それにしても2週間連続でやるなら示し合わせて同じ日に作業してよ、
と思いつつ朝食を済まし食器は洗えないままパソコンに向かった。
しばらく作業したところで便意をもよおしトイレに行こうとしてハッとした。
そう、断水しているという事はどうにもこうにも流せないのである。
「ゲゲ〜ッ」と悪魔超人の様な叫びをした後、
コートをはおり最寄りのコンビニに向かって飛び出した。
急ごうにも急げない事態。
こんなときに限り,横断歩道で青いヒトが点滅したりする。
なるべく患部に負担をかけないよう妙な動きの早足で、
どうにか向こう岸にたどり着き、その先のコンビニに駆け込む。
しかしここで待っていたのは期待通りの使用中。
悠長に立ち読みでもして待つ余裕などないのでとりあえず退店。
別候補をあたる算段を立てる。
脳内に展開する周辺地図、その中に点在する使用可能トイレ。
どうやらここからだと駅ビルのトイレが一番近そうである。
そうとなったら一目散、またも例の早足で現地へ。
向かう途中、確かあのトイレは大の方は1個しかなかったはず、
などという事が頭に浮かび、これまた使用中だと本当に緊急事態に陥るので、
どうか空いています様にと願をかける。
現地に着き2階にあるそのトイレへエスカレーターを駆け上が・・・、
れずに、自動運転に身を委ねる。
こんなとき上の階に見えるヒトがトイレ方向に向かっているだけで、
もし今トイレが空いていてあの人が先に入ったらどうしよう、
一番待つのが長い状況に立たされるではないか、
などとネガティブな発想に苛まれてしまうのも、
人間の奥ゆかしいところである。
エスカレーターをおりトイレに到着すると、
果たして幸運にも個室はvacant、空いており無事用を足す事が出来た。
それにしても我慢して我慢して空きトイレを見つけた、
あの瞬間の安堵感と幸福感といったらない。
その時点で安心してしまいズボンをおろすまで緊張を維持させるのが困難な位、
心身ともに浸れるあの感覚。
まさか天下の往来でもらすわけにはいかないと、
がんばったものにのみ与えられるあの感覚。
まさに稀に見る至福の瞬間なのだが、
全く持ってもう一度味わいたいとは思わない希有な存在である。

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