今回起こったサクシンとサクシゾンの間違いについて、サクシンを製造販売しているアステラス製薬から注意喚起の案内が出されています。
うちの病院にも、たぶんMRさんが配ったと思われるその文書が届いていました。
アステラス製薬
医薬品安全管理責任者・医療従事者の方へ
サクシンご使用にあたってのお願い
医療ミスが起こって、それに対応して日本病院薬剤師会が動いて、さらに製薬会社も動いたという流れです。
【関係ページ】
2008/11/26「筋弛緩薬の疑義照会徹底」
2008/11/20「サクシゾンとサクシンの間違い」
これを機会に、もう一度このミスを見直してみましょう。
ちょっと前にでていた該当病院の地元新聞、徳島新聞の社説を掲載します。
11月21日付 鳴門病院投与ミス 厳しいチェックが必要だ
医療現場で痛ましい事故が起きてしまった。健康保険鳴門病院の医師が、入院していた七十歳代の男性患者に誤って筋弛緩(しかん)剤の投与を処方し、患者が亡くなった。
患者は近く退院する予定だったという。それなのに突然帰らぬ人となってしまった。退院を心待ちにしていた家族らの落胆と怒りを考えると、やり切れない思いだ。
原因は単純なミスだったが、取り返しのつかない重大な結果を招いてしまった。人の命を預かる医療に携わる関係者は、責任の大きさをあらためて胸に刻み、事故防止に全力を挙げてもらいたい。
病院によると、患者が夜間に高熱を出したため、当直の医師がパソコンで薬を処方した。その際、解熱効果のある副腎皮質ホルモン剤「サクシゾン」を検索しようとして、端末に「サクシ」と入力。一つだけ表示された筋弛緩剤「サクシン」を選び、二百ミリグラムを使うよう指示した。
サクシンは通常、手術以外にはほとんど使わない劇物だ。二百ミリグラムを一気に点滴すると死に至る可能性が高いとされる。
サクシゾンはサクシンと名前がよく似ているため、鳴門病院では五年ほど前から使用していなかった。当直医がパソコンに正確に「サクシゾン」と入力していれば、事故は避けられたはずだ。
当直医の処方に不安を感じた看護師は「本当にサクシンでいいですか」と確認したという。だが、当直医は看護師の言葉を聞き間違えた。当直医が気付いていれば、あるいは看護師があと一言、「サクシンは筋弛緩剤だが」と付け加えていれば、事故は防げただろう。思い込みの恐ろしさと再確認の重要性を、いま一度、肝に銘じなければならない。
投薬ミスは全国で多発している。サクシゾンとサクシンの取り違えは、二〇〇〇年にも富山県の病院で起き、患者が死亡した。
〇二年には、愛知県の病院で血圧降圧剤「アルマール」の代わりに、糖尿病治療薬「アマリール」を処方された患者がこん睡状態に陥った。〇三年には、鹿児島県の病院が強い抗がん剤「タキソテール」を抗がん剤「タキソール」と間違え、患者が死亡している。いずれもパソコンの入力ミスが原因だった。
こうした事故を受け、日本病院薬剤師会や日本医療機能評価機構などが再三、注意を呼び掛けている。しかし、ミスは後を絶たない。
事故を防ぐには医師や看護師、薬剤師らの二重、三重のチェックが欠かせない。思い込みを排し、各段階でしっかりと確認する必要がある。
パソコン画面の表示を分かりやすくする工夫も必要だ。アマリールを誤投薬した愛知県の病院は事故後、パソコン入力の際の薬の名前を「糖尿アマリール」に変えた。各病院もこうした取り組みを進めてほしい。
勤務医の過重労働も問題だ。鳴門病院でミスをした当直医はこの三カ月間、ほとんど休みがなかったという。今回のミスとの因果関係は不明だが、事故の引き金となった可能性は否定できない。勤務医不足による労働環境悪化への対応を急がなければならない。
徳島新聞社 社説
http://www.topics.or.jp/editorial/news/2008/11/news_122722870893.html
徳島新聞だけでなく、どのマスコミ報道でも、
「当直医の処方に不安を感じた看護師は「本当にサクシンでいいですか」と確認したという。」
ことになっていたが、どうやら事実は違うようです。
このことは、鳴門病院のホームページをみると書かれてあります。
平成20年11月21日 健康保険鳴門病院 お詫びと医療事故の経過について
看護師が薬剤部に薬液を取りに行き、実施に当たった看護師は、アンプルを見て筋弛緩剤であることに気づき、当直医に、「サクシンってどれくらいの時間かけていったらいいんですか?」と尋ねたところ、サクシゾンと聞こえた医師は「15から20分かけていって」と指示し、サクシンの投与が実施されてしまいました。
真相としては、「本当にサクシンでいいのですか?」と聞いたのではなく、サクシンの投与速度を確認したということのようです。
今回の件とは別に同様のミスがあるようです。
病院から報告された事故の概要
挿管中の患者さん、状態回復にて咽頭浮腫があるため手術室での処置となる。喘息もあり再挿管、そして浮腫もあるので気管切開の可能性もありと医師より情報あり。咳嗽、喘鳴あるも抜管した。直後に「サクシン、サクシン」と指示あり。「えっ、サクシンですか?」と聞きなおし「サクシゾン」と返答あり。何mgか、確認して点滴開始した。
事例 No.76 類似薬品のトラブル - 東京都医療安全管理体制支援事業 警鐘事例アーカイブ
◆事例1〜誤薬
A病院で患者にサクシゾン(抗炎症剤)を投与すべきところサクシン(筋弛緩剤)を誤投与し、患者が死亡する事故が起きました。この病院ではコンピュータによるオーダリングシステムで薬剤の処方が行なわれており、医師はサクシゾンを投与するつもりで、「サク」の2文字をキーボードで入力しました。画面には、「サク」で始まるサクシンとサクシゾンが表示され、医師はサクシゾンをクリックして選択したつもりで、実際はサクシンを選択してしまったのです。
サクシンの処方箋が発行され、薬剤師は疑問に感じながらもそのまま調剤し、病棟にサクシンが届けられました。病棟の新人看護師は、処方箋と薬剤が合っているかどうかを確認しました。しかし、サクシンについての知識が不足していたため、医師が誤った薬を処方したことに気づくことができず、そのまま患者に投与してしまい、患者が死亡しました。
日本看護学校協議会共済会 医療事故防止の心理学
医師がサクシンとサクシゾンとオーダー間違いをしたとしても、それを薬剤師と看護師の二つの目があるわけで、そこで間違いを発見すべきだと思います。
今回の鳴門病院の薬剤師の対応としては、
処方をみた薬剤師は、薬剤の量は通常の使用量を逸脱していないと判断し、調剤を行なってしまいました。
平成20年11月21日 健康保険鳴門病院 お詫びと医療事故の経過について
というように、オーダー間違いをスルーしてしまいました。
2008/11/20「サクシゾンとサクシンの間違い」のところで
「ここでひょっとして間違いではないかと、ピンとくるかこないかは薬剤師としてのセンスの問題かなとも思われます」←同業者としてのギリギリのいたわり?って感。
とのコメントをもらいました。
冷静に考えてみたら、サクシン200mgの病棟での点滴を止められないのは、薬剤師のミスだと思います。
医師への疑義照会は、薬剤師の義務です。
なにか変だなと思ったら、医師に問い合わせなければなりません。
さらに問い合わせの際に、電話で「サクシンでいいですか?」と聞いても、オーダーした医師は、自分はサクシゾンをオーダーしたつもりになっていますので、電話で「サクシン」と聞いてもそれは「サクシゾン」としか聞こえないでしょう。
だから、「筋弛緩剤のサクシンでいいですか?」と聞くべきであると言われています。
筋弛緩剤サクシンとステロイド剤サクシゾン、糖尿病薬アマリールと降圧剤アルマール、抗がん剤タキソテールとタキソールといった、間違えやすく、間違えるととんでもないことが起こる薬というものはある程度特定されています。
しかし、その間違いは残念ながらくり返し起こってしまっています。
大事なことは何度でも言わなければならないと思います。
病院のリスクマネージメント講習会などで、くり返し注意喚起をしてほしいものであると思います。