わかりますか「予後6カ月」 医師の言葉にメス
「予後(よご)は6カ月です」「腫瘍(しゅよう)マーカーが下がったので、化学療法が効いている」。医師に説明された言葉を、あなたは、どこまで理解できますか。国立国語研究所(東京都立川市)が、患者が分かりづらい医師の言葉100語を選んだ。来春までに、言い換えや分かりやすく伝えるための指針をまとめる。
理解しづらい医学の専門用語に選ばれたのは、予後のほか、QOL(生活の質)、寛解(かんかい)、合併症、浸潤(しんじゅん)など。
国語研が行った市民アンケートで、医療・福祉分野の言い換えの要望が高かった。これを受け、昨秋、杉戸清樹所長を委員長に、医師やコミュニケーション学の研究者ら24人で「病院の言葉」委員会を設置。「よく使われるのに、患者が分かりづらい」100語を選んだ。
これらの言葉について、診療上の重要度や患者らの理解の難しさ、実際の使われ方を、医師3千人、看護師・薬剤師1280人に尋ねた。
それぞれ650人、995人からの回答を分析すると、「必要度が高いのに、とても難しい」とされた言葉に「HbA1c」「予後」「ステロイド」などが浮かんだ。ただ、言い換えや説明なしで使っている医師は、この3語で6%、10%、23%いた。
委員会は、患者・家族に説明する際、「どんな用語が理解してもらうのに難しいと感じたのか」も、内科、外科、産婦人科、小児科の医師300人に尋ねた。その結果、様々な混乱が起きていることが分かった。
たとえば、白血病などで症状が一時的または継続的に消えた状態を示す寛解を、治ったととらえられた▽治療することで起こりうる合併症をミスと思われた――。
こうした状況に、委員の稲葉一人・中京大法科大学院教授は「専門用語の言い換えの問題ではなく、インフォームド・コンセント(十分な説明と同意)自体が問われている」と指摘。委員会は、分かりやすく伝えるための具体的な工夫を提案する。100語はホームページ(http://www.kokken.go.jp/)に掲載しており、今後の検討内容なども公開していく。
田中牧郎・国語研言語問題グループ長は「患者が、なじみのない医学用語を理解するのは難しい。専門家が分かりやすく伝える工夫をする必要がある。その手引きにしたい」と話す。(小西宏)
asahi.com(朝日新聞)2008年7月7日
知らず知らずのうちに我々医療従事者は、患者さんに難しい医療用語を使っているのかもわかりません。
でも、HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)なんていうのは、検査用語で、これをわかりやすい言葉になおすのはどうかと思います。
HbA1cがどういう検査で、検査値にどのような意味があるのかをわかりやすく説明するのが医療従事者としての仕事かと思います。
治験の同意・説明文書でも同様のことが言えます。
同意・説明文書はGCPでは治験責任医師が作成することになっていますが、医師が一から作成することは事実上難しいために、依頼者さんから案が出されて、それを施設ごとに直していくのが一般的です。
依頼者案のままだと患者さんにはわかりにくい言葉になっていることがしばしばなので、うちの場合だと、それをCRCが直してから責任医師に最終判断を仰ぐということをしています。
その作業の中で、依頼者案が治験実施計画書を強引に患者さん用に直しているようなものもありまして、直すのは大変なんですよね。
でも我々がわかりやすくしたはずの文書が、実際患者さんが読んだら、かなり難しい文書になっているのだと思います。
そこをわかりやすく説明するのがCRCの仕事のかと。
結局、通常の診療の中では医療用語自体は難しく聞こえても、それを患者さんに対してわかりやすく解説してくれる人がいないということが問題なんじゃないかと思います。
医師が外来診察中に説明するのは時間的に難しいのが現状です。
記事中にもあるように、インフォームド・コンセントの根本を問われているように思います。
「委員会は、分かりやすく伝えるための具体的な工夫を提案」されるそうですが、実際に使えるかどうか期待したいところです。