「いさかいは浮世の常
正しくば
ほほえみてゆけ
我は父の児」川島芳子
NHKの歴史秘話ヒストリアで何故、清の王女は男装のスパイになったのか!?と、虚実入り交じった川島芳子の生涯を紹介していた。
少女は御父様の望みを叶えたくて、日本に養女に行き
きっかけはもしかしたら養父に男女交際を咎められた男がかくもあっさり自分は関係無く非も無いと不誠実な姿をみせたこと、乙女心が傷ついたことかもしれないが、
御父様の夢のためには女でいるよりはと男装するようになる。
清の再興のために満州国などを行き来し、日本軍の宣伝に使われながら、戦況の移り変わりの中、中国の民が受けている扱いを日本で訴えたと言う。
実際にはスパイ小説が一人歩きしただけで、彼女が軍を率いることもなく、そうやって現実の変化に伴い、日本軍の傀儡でいるのではなく自ら、同じ血を持つ民の救済を講演活動で訴えたらしい。
更に戦況は変化し、日本が敗戦する。
川島芳子に待っていたのは、売国奴として中国で投獄されることだった。
日本の養父が戸籍に入れていなかったこともあり、奔走虚しく、日本国籍であることが証明出来ない。裁判記録の彼女の名前が「川島芳子」から「川島芳子(本名)」、「本名(川島芳子)」、そしてついに、川島芳子の記載の無い本名だけになる過程が恐ろしい。中国の地で生まれた、その後のことは無視。
敵国日本のためにスパイ活動をした、それはこのスパイ小説で明らかだと、最後は証拠にフィクションの小説があげられたという。
清で生まれ、清王朝の血統を継いでいることは彼女の誉れであり、父の夢清王朝の再興を同じように夢見た彼女は、その地で生まれ、その血のために死刑判決を受ける。
川島芳子として生きたことは何だったのか、その真実は明らかにすることなくスパイ小説が彼女の全てであったかのように。
当局はいかにしても彼女を諜報活動の罪で死刑にしたかったとしか思えない。
彼女は投獄中、短歌を詠んだ。
その最後(だったと思う)が冒頭のものである。
他の二人の王女がどうなったかも知りたかったが、なんとなく男装の麗人として名前を知っていた川島芳子の、もしかしたら幼いままの心をなんとか大きく見えるよう背筋を伸ばし力強く生きようとひたすら自ら鼓舞し続けた日々、御父様の夢、清朝再興を願い続けながらその果てにあったのは投獄、一方的な裁判、死刑宣告。
平和と言われる現在の日本でも偉いと言われる方々の虚実入り交じった言葉や、真実が求めきれないままフェイドアウトしてしまう機構。(政治や相撲ばかりでなく一企業や家族でも)
戦争とその後に続く時代には裁判にかけられただけでも記録が残るだけでも…という無念の死が数えきれないほどあるのだろうし、その裁判も公平なものが幾つあったのか…と想像に難くない時勢だったのだと思う。
見ていて、この特集の目線が正しいかもわからないけど、悔しくて、またあの初恋に似た思いをよせた男が不誠実でない態度だったなら男装の川島芳子は生まれなかったかもしれないなぁと思ったりすると、悲しくて涙が出てきましたよ。
そして
「いさかいは浮世の常
正しくば
ほほえみてゆけ
我は父の児」
画面にある間に写さなかったので、語尾が違うかもという不安がありますが、
いさかいは浮世の常
正しくば
ほほえみてゆけ
我は祖母の孫
と、置き換えて歯をくいしばりながらまた涙が出た。
いさかいは浮世の常
正しいか正しくないかは自分だけで判断出来るほど偉かない。ただ、最善を尽くす。最善を尽くしたならば、堂々と、
ほほえみてゆけ
そうだ、潔く笑顔を保ち凛と生きていけばいい。祖母のあの人の孫ならそう生きていけるはずだ。
弱きも我、だが祖母のように強く優しくなりたいと願うのも我。
ほほえみてゆこう。

1