女性の雇用に関するいくつかのデータがあります。大阪大学の大竹文雄教授によると、次の2つです(5月5日付日経新聞朝刊「経済教室」)。
1.女性の雇用率が高い企業ほど業績がよい
(一橋大学・川口大司准教授、神戸大学・佐野晋平講師の実証研究)
2.女性従業員は生産性よりも低い賃金しかもらっていない
(川口准教授と亜細亜大学・浅野博勝准教授の共同研究)
まず、最初の結果は直観とほぼ一致する、つまり、想像の範囲内です。もし女性の方が男性よりも能力があったとしても、男性を優先的に採用・登用する企業があるとすれば(日本のみならず世界の多くの企業がそうですが)、有能な女性を積極的に活用する企業との競争に勝てないでしょう。asktakaが調べたところ米国の実証研究でもウイスコンシン大学の研究グループが同様な結果を導いています。
次の点もうなづけます。少なくても女性の方が生産性が高いと思われるケースでも、たいていは男女同じ賃金・時給ですからね。
上記の2つのデータは、「経営者が女性を差別するため、優秀な女性を昇進させなかったり、生産性より低い賃金しか払わない」という仮説を裏付けるものです。
ところが、大竹教授によると、最近注目されている仮説があるそうです。それは「昇進競争に参加することを嫌う程度が男女間で違う」という仮説です。このため高所得をえる職業に就く比率に差が出るということになります。この仮説の意味するところは、男性の方が女性よりも競争自体が好きだったり、競争することで一層実力を発揮するというわけです。
この点は、カルフォルニア大学サンディエゴ校のウリ・グルーニー教授らの実験の結果、コンピュータ上の出来高制報酬のケースや徒競争のケースなどで女性は競争環境か否かを問わず成績は変わらないのですが、男性の場合は競争環境の方が成績がよくなるそうです。
さらに、スタンフォード大学のムリエル・ニーダール准教授らは、競争的な(報酬)環境自体を選ぶかどうかで男女差の有無を調べました。その結果、男性の方が女性よりも競争好きであることがわかったそうですが、大竹教授の実験結果も上記の米国での結果と同様だったそうです。
どうも最初の仮説である「会社側の男女差別」だけでなく、「男女間の競争に対する選好度」が雇用や報酬面での男女格差に影響しているようですね。だが、上述した二番目の仮説が検証されたとしても、asktakaは「女性の雇用率が高い企業ほど業績がよい」というデータをもっと真摯に受け止めるべきだと思います。
もう30年ほど前のお話になりますが(したがって、もう時効なのでエールを込めて)、ソニーが入社したばかりの女性社員をコンサルティング・プロジェクトの主要メンバーとして参加させたのには驚きました。同様な話は某シンクタンクや若手の登用で有名な会社との仕事で経験しましたが、当時のソニーは思い切った人材の活用をしたものだと感心しました。ソニーがこうした人の使い方を今でもできていたら、昔のような躍動感が持続し、業績にも好影響を与えると思うのですがね。
周りを見渡す限り、まだまだ女性の活用が遅れている企業が多いですね。こうした企業のトップには、女性の雇用と業績との間には正の相関関係があるというデータをしっかり見てもらいたいものです。