開業医の再診料引き下げ、見送りの方針
厚生労働省は、2008年度診療報酬改定で、焦点となっていた開業医の診療所の再診料引き下げを見送る方針を固めた。
開業医の影響力が強い日本医師会(日医)が強硬に反対し、与党も日医の意向を尊重する方向となったためだ。来年度改定では、医師不足が深刻化している勤務医の待遇改善策として約1500億円を盛り込む方針だ。財源については、再診料引き下げ分に代わって、簡単な診察の際にかかる「外来管理加算」の引き下げ分などで補う方針だ。
再診料は、2回目以降の診療にかかる費用で、診療所(病床数20未満)は710円だが、病院(病床数20以上200未満)は570円と、診療所の方が140円高い。これは「地域の医療を支える診療所の方が病院よりも診療報酬上では重視されてきた」(厚労省)ためだ。
だが、患者の「病院志向」の高まりで、病院と診療所の役割分担はあいまいになっており、「再診料に差がある理由がわかりにくい」との指摘が出ていた。このため、診療報酬改定を議論する中央社会保険医療協議会(中医協)が18日示した来年度改定の骨子は、「病院と診療所の格差是正について、検討する」と明記し、同一価格とする方向で調整していた。
だが、開業医の収入減に直結する再診料の引き下げについて、日医は一貫して反対を表明し、与党も「学校健診など、開業医が果たす役割は大きい」として、日医との非公式協議で引き下げを見送る方針を固めた。
(2008年1月30日 読売新聞)
タミフル減「備蓄に不安」 新型インフル対策で専門家 「スクランブル」
「いつ発生してもおかしくない」と言われる新型インフルエンザ対策の柱として、政府が進めているタミフルなど抗ウイルス薬の備蓄。これに対し「今のやり方が緊急時に機能するのか」と不安視する声が専門家から上がり始めている。
理由は、異常行動への懸念から激減したタミフルの流通量。日本の計画はタミフルの大量流通を前提に、通常のインフルエンザ治療に使われなかった「流通在庫」を、非常時の備蓄の一部としてあてにしているためだ。
厚生労働省は「問題なし」との姿勢だが、国の危機管理の在り方が議論になる可能性もある。
▽16%が在庫頼み
「危機管理策として問題ではないか」と指摘するのは、インフルエンザに詳しい菅谷憲夫(すがや・のりお)けいゆう病院小児科部長だ。
政府の新型インフルエンザ対策行動計画は、新型の大流行時に必要なタミフルの量を国民の2割弱、2500万人分と想定。うち2100万人分は、国と都道府県が分担し3月までに備蓄を終えるが、必要量の16%に当たる残り400万人分は、通常のインフルエンザ治療用に市場へ出回るタミフルで賄うとした。
これまでは、輸入販売元の中外製薬が実際の販売量を大きく上回る1200万人分を供給できる態勢を取っており、その余裕も現実的に見えた。
ところが昨年3月、事情は急変した。服用後の飛び降りなど異常行動の報告が相次いだのを受け、厚労省が10代患者へのタミフル使用を原則中止。この影響で昨冬(2006-07年)のタミフル販売量が大きく落ち込み、中外製薬は今冬(07?08年)の供給量を従来の半分の600万人分に激減させた。
▽追加輸入も
菅谷部長は「今冬のインフルエンザ流行の規模が大きくなったら、備蓄分は確保できない恐れがある」と指摘する。
だが中外製薬広報は「400万人分は当社が供給を約束するものではないが、国の方針なのでできる限り協力する。仮に今シーズン必要になっても、追加輸入などの措置を取れば確保は可能だ」と説明している。
世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局で感染症対策に携わった押谷仁(おしたに・ひとし)東北大教授は「需要が急増したらなくなってしまう流通在庫を、非常時の備えに組み込むのは本来おかしい」と指摘。
そのうえで「日本の計画では、新型流行でパニックが起き、流通も混乱した際に薬を必要な人にどう届けるかの具体的なシステムが検討されていない。まず配分システムを詳細に検討し、結果に基づき現実的な必要量を見積もる作業が求められる」と話している。
共同通信社【2008年1月29日】
医学論文 急減 処分恐れ医師ら萎縮?
治療の副作用や合併症に関する医学論文の数が昨年後半から急激に減少したことが、東京大医科学研究所の上(かみ)昌広客員准教授(医療ガバナンス論)らのグループの調査で分かった。このうち、診療中に起きた個別の事例を取り上げた「症例報告」はゼロに近づいた。グループは、厚生労働省が検討する医療事故調査委員会の発足後、行政処分や刑事責任の追及につながることを医師が恐れて萎縮(いしゅく)し、発表を控えたためと推測している。
グループは昨年12月中旬、国内の医学論文のデータベースを使って、06年1月〜07年10月に出された副作用や合併症などに関する論文を探し、総論文数に対する割合を月ごとに調べた。
その結果、国内では毎月、1万〜4万件前後の医学論文が発表され、一昨年から昨年前半までは合併症の論文が全体の13〜17%あった。しかし、昨夏ごろから急減し、10月には約2%になった。副作用の論文も以前は4〜6%あったが、昨年10月には約2%に減った。
特に、副作用の症例報告は、以前は1%前後あったが、昨年10月にはゼロになった。合併症の症例報告も、以前は5〜9%あったが、昨年10月には0.1%しかなかった。
厚労省は昨年10月、診療中の予期せぬ死亡事故の原因を究明するために創設する医療事故調査委員会の第2次試案を公表した。死亡事故の国への届け出を医療機関に義務付け、調査報告書は行政処分や刑事責任追及にも活用する場合もあることを盛り込んだ。10年度をめどに発足を目指している。
上客員准教授は「副作用や合併症が報告されない状態が続くと、医学が発展せず、国民の被害は大きい。リスクの高い診療科からの医師離れも促す。調査報告書は行政処分や刑事責任追及に使われないようにすべきだ」と訴えている。
1月27日 毎日新聞
薬事法第77条の4の2 第2項
薬局開設者、病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者又は医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者は、医薬品又は医療用具について、当該品目の副作用その他の事由によるものと疑われる疾病、障害若しくは死亡の発生又は当該品目の使用によるものと疑われる感染症の発生に関する事項を知つた場合において、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、その旨を厚生労働大臣に報告しなければならない。
新型インフルエンザ流行なら…看護師「転職」31%
新型インフルエンザが大流行した場合、医療従事者の26%が転職も考えていることが、産業医科大学などの調査で分かった。患者に接する機会が多く、インフルエンザの予防知識が十分でない人ほど、不安を強く感じる傾向が見られ、医療従事者への研修なども必要になりそうだ。
調査は、6都府県の七つの大学病院などで働く約1万人を対象に実施、約7400人から回答を得た。
複数回答で、75%が「仕事で感染するリスクがあるのは仕方がない」と答える一方、26%が「感染リスクがあるなら転職も考えたい」とした。
転職を考える人は、看護師が31%と最も多く、次いで、技師や事務職員が23%、医師が17%だった。
看護師は、患者に接する機会も多いだけに、68%が仕事を通じて新型インフルエンザに感染する恐れを抱いていた。
研究チームの高橋謙・産業医大教授(環境疫学)は「予防に関する知識が必ずしも十分でなく、不安が先行している可能性がある。新型インフルエンザに関する教育、研修などの取り組みを、各施設で強化することが重要だろう」と話している。
(2008年1月26日 読売新聞)