私自身のことで恐縮ですが、若い頃は酒を飲んでも顔が赤くなる前に青くなっていました。
しかしこの頃は(昨日も歓迎会があり、本日やや二日酔い気味でしたが)、酒を飲むと顔が赤くなるようになりました。
そんな顔の赤い私を見て、専任の治験コーディネータ(CRC)さんの看護師さんから、「お酒を飲んで顔が赤くなる人は、アルツハイマー型認知症になりやすいですよ」と言われました。
勤務先病院では高齢患者が多くいらっしゃいます。
そのため、アルツハイマー型認知症にかかられている方も多くいらっしゃいます。
また現在、私自身が治験に関わっていますが、アルツハイマー型認知症の治験を多く実施しています。
専任CRCさんはアルツハイマー型認知症患者さんに接する機会が多く、検査のために採血するときに、アルコール綿を使えない患者さんが多いことを経験的にご存知であるとのことです。
確かにそのような論文があるようです。
●「アルツハイマー、お酒に弱い人は要注意」(日本医科大学老人病研究所)
http://www.nms.ac.jp/ig/introduction/saiboseibutsu/ourpage/topics/attention.html
お酒(エタノール)は、体内で「アルコール脱水素酵素」の働きによって、有毒なアセトアルデヒドに変えられ、ついで、「アルデヒド脱水素酵素」のはたらきによって酢酸になり無毒化される。アルデヒド脱水素酵素には17種類もの酵素があり役割分担して毒性の強い諸々のアルデヒド類の解毒にあたっている。このアルデヒド脱水素酵素のなかでもアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)とよばれる酵素がアセトアルデヒドを主に解毒する。アセトアルデヒドが、頭痛、吐き気、紅顔の原因であるので、ALDH2の働きが弱い人が「お酒に弱い人」である。モンゴル系アジア人の中にはALDH2遺伝子の一ケ所が変化した遺伝子(ここではALDH2*2と呼ぶことにする)を持つ人がいて、この遺伝子を持つ人のALDH2のはたらきは弱い。日本人では約40%の人がALDH2*2 をもち、「お酒に弱い人」である。
そもそも日本人の40%はお酒に弱いのですね。
●「お酒とアルツハイマー病の関係」(日本医科大学老人病研究所)
http://www.nms.ac.jp/ig/introduction/saiboseibutsu/ourpage/topics/alzheimer.html
ALDH2の酵素活性の有無を決定する遺伝子の一塩基を検出することが簡単ですから、ALDH2遺伝子の一塩基の違いとアルツハイマー病患者における頻度を調べてみました。65歳以上のアルツハイマー病患者447人と非痴呆の対照とする人447人のALDH2遺伝子を調べました。対照と患者の、男女比、地域、年齢を一致させ、他の要素によって影響されないように慎重に調べました。結果は、
「ALDH2酵素欠損型の遺伝子を持つ人は酵素活性型の遺伝子をもつ人よりも1.6倍高く、統計的には99.9%確かである」という結果が得られました。
ということは、お酒に弱い人は強い人より1.6倍アルツハイマー型認知症になりやすいという結果です。
さてこの「1.6倍」という数字をどのように評価すればいいのでしょうか。
「お酒の弱い人は若干アルツハイマー型認知症になりやすいのかも」程度のことではないかと思われます。
では、お酒を飲めない人でも、お酒を無理に飲むと、または飲めるように訓練すると、アルツハイマー型認知症の発症予防ができるのではないかと思われる方もいるかもしれません。
しかし、もともと持っている遺伝子によって決まっていることですから、お酒を無理矢理飲んでもその遺伝子が変わるわけではありませんので、お酒を飲むことによってアルツハイマー型認知症の予防ができるとは考えにくいでしょう。
では、予防についてですが、残念ながら現段階では明確な結論をいうことはできません。ただ、飲酒に関しては、おそらく関係ないと思われます。根拠は、 ALDH2遺伝子型とアルツハイマー病の関連では、男女間にほとんど差がなく、飲酒習慣は男女間では大きな差があるということです。つまり、アルツハイマー病になりやすさは遺伝子が決めていて、飲酒には関係ないということです。また、飲酒によって遺伝子型を変えることはできないことも当然です。
●「お酒とアルツハイマー病の関係」(日本医科大学老人病研究所)
http://www.nms.ac.jp/ig/introduction/saiboseibutsu/ourpage/topics/alzheimer.html
私が最近お酒飲んで顔が赤くなるようになったのは、遺伝子が変わったわけではなく、たぶん体調のせいなど他の要因だと自分で勝手に思っています。
自分がアルツハイマー型認知症にかかるかどうかはよくわかりませんが・・・
アルツハイマー型認知症の治療薬が現段階において日本では塩酸ドネペジル(アリセプト)しかないので、どんどんと増えることを期待しております。
そのために治験をがんばって実施しているというところです。
【関係リンク】
●All About:飲酒でアルツハイマー予防は誤解
http://allabout.co.jp/health/healthfood/closeup/CU20030203A/index.htm
●d-inf:抗生物質とお酒とのおいしくない関係
http://d-inf.org/drug/antabuse.html