よくさー、若者言葉を取り扱った文章とかでさー、
「曖昧」
って言葉よく出てくるよね。あるいは、日本語の特徴として
「曖昧」
なんて言葉を使って説明する文章もよく見かけるよね。で、これ本当に「曖昧」なのかしらね。みたいに、ちょっと「曖昧」という言葉を再考してみたくなったのよ。そうするとまず、曖昧って何なのか考え直さねばならぬ。
手元に相変わらず新明解しかないので、その定義を見てみる(抜粋)。
曖昧
手順が確立していなかったり規模がはっきりしていなかったりして、明解さを欠く様子 ⇔明確・明瞭
ま、一辞書の記述だけを首肯して論を進めるのもアレだけど言語における「曖昧」さというのは「必要充分な情報が与えられない表現」みたいなものだと理解すれば良いんだろうか。上記記述を参考として考えると例えば;
@手順が確立していない
「今日学校来た?」→主語が明示されず「曖昧」だ
「お前食う?」→目的語が明示されず、または格関係が明示されず「曖昧」だ
「窓を開けたら?」→開けたらどうなるのか、主文が明示されず「曖昧」だ
A規模がはっきりしていない
「サッカーとか見ます」→サッカーの他に何があるのか明示されず、あるいはサッカーだけかもしれないのに他にもありそうな感じでほのめかしていて「曖昧」だ
「ちゃんとやってきたし」→やってきたし、何があるのか明示されない、あるいはやってきただけなのに他にも行動があるかのようにほのめかしていて「曖昧」だ
…みたいな感じに、分類可能であろう。か。
…とまあ、「曖昧」の定義と照らして、なるほど「曖昧」なのかもなと思わせられる言語現象は、了解した。
で、果たして言語その根源的機能からして言語本来の進化の方向性として「曖昧」というものには、どのような意味があるのだろうか。というか言語が本来的に「曖昧」さを指向するならば、それは普遍的であって日本語特有でなく、古来からであって若者言葉特有ではないものと思われる。どうなんだ。
一般的な了解からすると、上記辞書定義における反対語「明確」「明瞭」は言語学用語としては用いられない(よね?)。「曖昧」に対する概念と考えられるのは、おそらく「断定」。そしてフツウ「断定」に対する用語は「推定」…?みたいな、何か描かれる事物を間接的にとらえた表現であろうと思われる。
言語学的な述語としての「断定」とは、何なのだろうか。
「私は学生だ」
断定。なるほどこの文、自分のことだし疑う余地も無く断定できるという気持ちはわかる。これに対して
「彼は学生だ」
は他人事だが、断定だとすると発話者はこの事実に疑いがなく、知識が事実と異なる可能性を完全排除しているようにも見える。可能性としては、少なくとも昨日まで学生の身分だった彼が、今日までのわずかな時間でその身分が剥奪された、なんてことも現実社会ではままあることである(そうか??)。それは「私は学生だ」にも言えることで、自分のことであってもいつの間にやら学生身分剥奪されている恐れはあるかもしれぬ。断定というのは、通例事実に順ずるものであるが、基本的には話し手の確信度に由来するモダリティの一種であると思われる。
事実の伝達、が言語の担う機能の一つだとしたら、逆にある伝達したい事実の確信度が低い場合、それも同時に伝えなければならない。そうか、事実の信用性の高さ低さが全く言語表現に現れない言語があったら、そりゃ大変だわ。あるのかな?聞き手も、それを聞いて事実の信頼度を知ることができるというのは理にかなう。それで、推定やら伝聞やらのモダリティも生じた。
「自分、学生とかやってます」
「とか」が「曖昧」を示すのか考えてみると、まず上記の例の確信度は「私は学生です」とおそらく変わらない(文脈無視)。自分が学生であることへの確信度が低い可能性を相手に提示することは、おそらく「いつの間にやら、自分も知らないところで自分の学生身分が剥奪されているかもしれない」みたいな可能性の極めて低い情報を付与することとなるだろう。
上記「とか」の機能として考えられるのは
A)身分としては学生以外にも、家ではしがない兄、放課後は部活の主将、部活後はスーパーのアルバイト店員、バイト後は恋人を大事にする一男である、といった具合にいろいろ考えられるため、その代表的なもの、有体な自己紹介で良ければ、まあ「学生」と答えるのが無難かな、みたいな含み
B)学生の本分は学業といわれるがその実、雑念が多すぎて勉強なんか手についていない。こんな自分が学生と名乗るのははばかられる、みたいな含み
やはり、「曖昧」さと形容するのが適当なのか。
しまった、全然推し進めたかった方向に行かなかった。とりあえず僕は「曖昧」さは基本的に現代語のまたは日本語の特有な現象というわけではないと考える。推定などのモダリティは呼び方一つで「曖昧」にもしうるものだし、これに若干悪いイメージを植えつける用語として「曖昧」が定着した感がある。
「曖昧」の機能としては話者自身による発話内容の信憑性への言及と、謙遜のような機能とがあると考えられる。ああまたまとまらなかった。

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