前回の記事では、語学を楽にするための方法として「最低限語彙」の設定をしようと試みる最初の段階を踏んだ。で、実際に「最低限」必要な語彙とはどんなものか考えなければならない。
よく見かける「意味分類」された字引の類、それも歴史資料になるような代物だと、どうも「名詞」に比重が偏りやすい。名詞とは何かというのがそもそも大問題だが、言語によってはそれで充分という場合もあるかもしれない。逆に、(「名詞」に対応する概念として)「動詞」を操れれば道半ばと言える言語もあってしかるべきだ。少なくとも、「それっぽい」語学を目指すことが可能になると信じる。そこで、まずもって「動詞」に着目して最低限語彙を考えてみたい。当方としては、暗記しなきゃならん動詞は100くらいで収められないかと期待している。
さっそく前回の記事で触れた「
ベーシックイングリッシュ」を読んでみた。
考案者オグデンは、必要最低限の語彙としてばかりでなく、一枚の紙に全部まとめて書いておけるくらいの量として850語を選んだんだという。これは、なるほど。当方としても「楽に学ぶ」の前提として、選定した語が全て一枚の紙に収まるのならば、確かに勉強しやすかろう。
ところが、このベーシックイングリッシュ、
基礎的な「動詞」としてはたった16個しか用意していないのである。というか、それこそがこのベーシックイングリッシュの精髄とでも言うべきか。以下にその16語を挙げる。
come get give go keep let make put seem take be do have say see send
ははあ、なるほど。この良く使えて便利な動詞に絞ったとそういうことなんですな。そしてその他の動詞的意味については、例えば副詞(前置詞的と同形の副詞も多々ありますよね)とかを付すことで表現する。我々が英作文する上で、意外な意味があったり、慣用的な表現があったりと面倒なこともあるこの基本的な16語。
またさらに、ベーシックイングリッシュとしては300語ほど、動詞的な変化を施すことで(-ing, -ed, -er)用いることのできる名詞があるという。これは純粋に動詞ではないが、これをbe動詞と組み合わせたりすることで、やはり動詞的に用いることができるという。これはやはり、ある面から見れば動詞は基本的なものに限っており、名詞を重視していると見ることも出来よう。人工言語でいえば「
ノシロ語」が、多くの造語形態素を名詞用にまわし、動詞についてはそれらの名詞を派生させることによる、というのと似ている。ベーシックイングリッシュの場合、こうした「名詞」の「派生」のパターンが16種類に及ぶ(ノシロ語は1〜4種類まで)ということだ。
…で、これでは「世界のいろんな言語を学ぶ上で必要な重要語」を選定するのにはあまり役立たない。ベーシックイングリッシュも中学英語も、そもそも英語が前提であるとはいえ、これでは英語に偏りすぎである。
というわけで、中学英語の方を見てみることにする。参考にさせて頂いたサイトは前回も紹介した
英語・TOEIC・英検の学習法 無料教材を提供するサイト
さんの、「英語の基礎知識」→「
中学教科書に出てくる英単語」に挙げられた845語である。で、やはりこれら全てを吟味するのは大変ということもあり、動詞をピックアップしてみる。
動詞には「動」というように品詞が示されているので、これをもとに検索(助動詞は考察外)。数え間違い御免、品詞の誤植に見える例やbeen(<be)を除くと143語の動詞が検出された。
同サイトでは、一般に用いられる中学校英語教科書5社5冊を調べ、5社とも採用している語(1)、4社が採用している語(2)、3社が採用している語(3)に分けている。この3社以上が採用している重要後が845というわけである。
1
answer ask be begin bring call carry catch clean close come cry cut dance do eat enjoy excuse fall feel find finish get give go have hear help hold keep know last learn leave like listen live look love make mean meet move name open park play practice put rain read remember ride run save say see send shop show sit sleep speak start stay stop study take talk teach tell thank think turn understand use visit wait walk watch work worry write
2
agree arrive become borrow build buy change cook die drink drive face follow happen hope introduce invite join message miss need order plant point protect sell shout sing smile snow stand swim try want wear win
3
believe break choose decide exchange fly jump kid lose paint pardon pass pray rest rise share sound spend surprise touch travel wake wash wrap
と、単に羅列されても見たくもないが、中には(基礎の段階においては)動詞としての用法よりも他の品詞としての用法の方が知られていそうなもの(name, shopなど)、他の慣用的表現で使われ(基礎の段階では)単独では用いないだろうと思われるもの(thank, kidなど)、日本人的には意味が似ていて区別しにくいもの(startとbeginなど)が含まれ、「最低限」の「動詞」を選定するために捨象すべき余地は多分にありそうだ。
もう一つ面白いのは、普通このように分布を整理した場合、「5冊全てに共通するもの」と「3冊のみに共通するもの」とでは後者の方が数字が大きくなりそうなものである。ところが実際には(数は記されておらず、数えてもいないが、凡そ)「5冊全て」が全体の半数を占め、微妙だが「4冊に共通」は「3冊に共通」よりも微妙に少なそうである。これは、そもそも教科書と言うものが「基礎的な語彙」というのを前提に作成されている証拠である。「5冊全て」こそが基礎的なもので、それ以外は偶然の一致というくらいに考えてもいいのかもしれない。
次回、この中学英語の動詞について再検討してみたい。


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